先日、表参道で開催されている『会田誠展 GROUND NO PLAN』を見に行きました。
会田誠さんといえば、2012年に森美術館で開催された『会田誠展 天才でごめんなさい』にも行きましたが、当時は初会田だったので、上手な絵だけど、エログロばかりでなんだかなぁと思っていました。
今回も美少女エログロ作品かな、と思いましたが、まったく違います。
今回のテーマは、公益財団法人大林財団の助成プログラムによるもので、主に「理想の都市のあり方」に関する提案という超真面目(?)なものです。
2年に1度、豊かで自由な発想を持ち、さらに都市のあり方に強い興味を持つ国内外のアーティストを5人の推薦選考委員の推薦に基づいて決定し、従来の都市計画とは異なる視点から都市におけるさまざまな問題を研究・考察し、住んでみたい都市、新しい、あるいは、理想の都市のあり方を提案・提言していただくというものです。アーティストが都市をテーマに研究・考察する活動を支援する助成制度は他に類を見ず、その意味でユニークな試みであります。
ところが、ネット上の写真では、妄想全開の暴走都市計画が示されていました。
「これが会田誠という人か」と納得。
これを先に知っていれば、『会田誠展 天才でごめんなさい』も、別の視点で見れたかもしれません。
さて、その内容ですが、入っていきなり謎の塔、『Shaking Obelisk』が出迎えてくれます。
『Shaking Obelisk』は、揺れてプルプル震えるものらしく、模型もあったのですが、「故障中」という札付き。
どこまでが作品で、どこまでが風刺なのかという、あえて考えさせられてみました。
次いで目に入るのが、新宿区にある都庁の在り方です。
会田さんとしては、都庁はしっかりと天守閣を備えよ、というものです。
こんな雑なコンセプトを、しっかりと山口晃さんに描いてもらっています。
自分で描かないアートの存在に驚きです。
ちなみに、入ってすぐの左側に、会田さんの視点で書かれた都市(特に東京)の在り方を、石原慎太郎都知事(当時)にあてた提言?が書いてあります。
たくさん書いてあるので、全部読むのに時間がかかりますが、最初の指摘は「まさにその通り!」と思います。
東京都心の川や堀はよどみが多く、公園などの緑地も小さく、都市計画としてどうなの?と。
とはいえ、これが東京の歴史であり、我々がこの先、この土地をどうしていきたいか、などが書かれています。
「余は、東京の緑地が少ないから、あの土地を明け渡せ、とは言えない。だって暗殺されたくないからー」ってフレーズが最高に面白かったです。
続いて、日本橋の在り方的な感じで、ざっくりとした日本橋の絵があります。
がしかし、サイズ感がおかしいです。
この角度、登ったら落ちで死亡です。
そんな日本橋をこれまた山口晃さんに描いてもらっています。
今回の提案のメインは、新宿御苑の在り方です。
これもまた、入念な脳内妄想リサーチに則り、かなり具体的・現実的に考察・提案されているものです。
黒板いっぱいに、チョークで描かれた問題の気づき、コンセプトの提案、具体的な在り方まで、かなり詳細に描かれています。
これが実現不可能だとはわかっているものの、東京が抱える問題点をしっかり指摘し、この制約条件の中で可能な限りの提案をしています。
東京は土地が少なく、都市機能と人口の集中により、緑地のような本来必要不可欠な都市機能が欠落しています。
これを新宿御苑でどのように代用するかという提案で、一つの解として、「高低をつける」という点です。
新宿に高層ビルが立ち並ぶように、新宿御苑を山岳化するという提案です。
こんなことは、確かに誰も考え得るアイデアではないです。
ですが、新宿御苑に川が流れる山を作り出すという都市計画があってもよいのかと考えさせられました。
TWITTERで、会田さんは「海外で無名」とありましたが、意外と海外の方が見ていました。
まじめなはずの大林財団のプログラムですが、表面的に見ると会田誠さんの乱暴なコンセプトでかき乱されているようですが、その奥に真剣に都市の在り方を、見る側に考えさせるという点で、成功したのではないかと感じました。
個人的には、「都市の在り方の提案」にもかかわらず、崩壊させている落書きが好きです。
おい、都市作りだろ!と、突っ込みたくなる「はいきょ」です。
線画なのに、どうなっているのか、ストーリーが分かる技術に脱帽です。
ぜひ、見に行って欲しい展示会でした。
別件ですが、会田誠展を見終わった後、外に出ると、豪快に車が燃えてました。
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