2018年9月7日時点で、2019年度の日本国におけるアートに関する予算要求が文化庁より出されました。その額は総予算 1,027,658億(102兆)(出典)円中の1,331億円です。文部科学省本体が概算要求額 50,050 億円に対し、要望額が 9,302 億円で足りますか?
そのうち、文化庁の予算要求は、前年度予算1,077億円に対し、2019年度の要求・要望額は1,330.5億円となっています。 前年度から253億円の増額です。
何に使うのかというと、ずらっと50項目にも及びます。
以下、出典は文化庁HPより、「平成31年度文化庁概算要求の概要」及び「参考資料」を抜粋。
全体的には、日本文化の海外発信を強化し、観光・経済により地方創成を進めるという方向感です。
文化芸術創造活動への効果的な支援として、世界における日本の文化芸術への関心と評価を高める取り組みが推進されます。また、「日本博2020(仮称)」の企画・実施が進められます。
新たな時代に対応した文化芸術人材の育成及び子供たちの文化芸術体験の推進としては、才能豊かな新進芸術家等に、海外の大学や統括団体等における実践的な研修の機会を提供すること等により、次代を担い、世界に通用する芸術家等を育成します。
国際文化芸術発信拠点形成事業としては、文化資源により社会的・経済的な価値を創出し、訪日外国人(インバウンド)の増加や活力ある豊かな地域社会の形成等に資するため、芸術祭などを中核とし、国際的な発信力を強化した大規模かつ持続的な文化芸術発信拠点形成を支援するとあります。
「2020年以降へのレガシー創出」として、未来戦略が示されています。我が国の文化芸術の水準が世界的なものに高まり、文化芸術による国家ブランドが構築され、海外からも高い評価を得られる公演が増加することで、インバウンドも増加が予想され、『観客層の拡大→入場料収入の増→公演数や質の向上→観客層拡大』といったプラスのスパイラル効果が期待されています。
国立アイヌ民族博物館の整備等として、アイヌ文化の復興等に関するナショナルセンター「国立アイヌ民族博物館」を北海道白老町に整備する計画が進められています。平成32年4月24日の開館に向け、平成31 年度は、建物等の施設整備を完成させるとともに、運営主体を中心にした展示資料の収集・保存・管理のほか、収蔵棚等の設置、研究機 材等の調達、ミュージアムネットワーク事業等の開館準備が進められます。(文化庁HP)
国宝・重要文化財については、以下の課題があります。
2008年、運慶作の大日如来坐像(当時未指定)が、アメリカでオークションにかけられたというエピソードが紹介されています。文化庁は所有者からの先買の申し出がある一方、予算の都合上購入を断念した経緯がありました。競売の結果、12億5千万円で日本の宗教法人が落札し、辛うじて国外流出が免れたことから、国宝に値する文化財を積極的に購入保護しようという試みです。
我が国におけるアート振興のための基盤の整備と日本作家及び現代日本アートの国際的な評価を高めていく活動を展開し、世界のアート市場
規模に比して小規模にとどまっている我が国アート市場の活性化と我が国アートの持続的発展を可能とするシステムの形成を目指します。
世界のアート市場規模(2017年)は637億ドル(約6兆7500億円)とされ、1位米国2.84兆円(42%) 2位中国1.42兆円(21%) 3位英国1.35兆円(20%)の順位ですが、日本は2,437億円と経済の実力に比して小規模となっています。
そのための取り組みとして、アート・プラットフォームの形成が掲げられています。まずはアートシーンに関する動向調査、海外関係者とのネットワークの構築
、美術館や評論、市場等、幅広い関係者の連携協力体制の構築を築くところからスタートです。
日本アートの国際発信力強化としては、我が国に世界のトップ層を惹きつけ、日本が世界有数のアート発信拠点へと成長するための取り組みと若手作家を含めた現代日本作家の飛躍を後押しする個展等を行います。
この予算根拠は、「経済財政運営と改革の基本方針2018」(平成30年6月15日閣議決定)にあり、文化芸術立国の実現として、2020年までを文化政策推進重点期間と位置付け、文化による国家ブランド戦略の構築や稼ぐ文化への展開、文化芸術産業の育成などにより文化産業の経済規模(文化GDP)の拡大を図るとともに、文化財の高精細レプリカやVR作成など文化分野における民間資金・先端技術の活用を推進します。
また、子供や障害者等の文化芸術活動の推進や、国立文化施設の機能強化を図るとともに、文化財を防衛する観点を踏まえ、文化財の適切な周期での修理や、保存・活用・継承等に取り組みます。
国立文化施設(国立美術館、日本芸術文化振興会、国立文化財機構)が、国民の貴重な財産である有形・無形の文化的資産を確実に保存、蓄積、継承、発信するとともに、基幹的設備整備などの機能強化及び快適な観覧・鑑賞環境の充実に必要な整備を行うことにより、ナショナルセンターとしての機能強化を図ります。また、国立科学博物館等の自然史系を含めた博物館を文化庁にて所掌することにより、さらなる連携・機能強化を図ります。
国立新美術館の土地購入等の費用として、国立美術館施設整備費補助金39億円の予算が確保されています。今後の拡張整備が楽しみです。
意外と重要な施策がこれではないかと思います。
確実に労働人口が減少していく日本では、海外からの観光客の呼び込みと同時に、一定の移住者も増えていきます。文化的な衝突を避けるためには、早い段階から日本語や文化・風習を伝えることだと思いますが、これも文化庁の業務範疇のようです。
新たな在留資格の創設等を踏まえ、地方公共団体が関係機関等と有機的に連携し、日本語教育環境を強化するための総合的な体制づくりを推進するとともに、「生活者としての外国人」の日本語学習機会の確保を図るとあります。
細かく見ていくと、多方面での施策が求められている文化庁ですが、アート支援が上手くいくといいですね。