新潟県の燕三条とハサミを調べてみる

新潟県燕三条のハサミ製造業について調べてみた。

少し前に新潟県三条市のハサミについて、ハサミ工場さんに取材協力をいただきながらいろいろ調べてみたのを思い出し、せっかくなので載せておきます。

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ハサミの構造

ハサミは「テコの原理」を利用した道具である。その構造は大別して「U型 握り鋏(和鋏)」と「X型 ラシャ切り鋏(洋鋏)」に分けられる。

 ① U型 握り鋏(和鋏)

和鋏は日本刀の伝統技術である「付け鋼」を採用し刃部に鋼と軟鉄の複合材を使用して鍛造し、柄(鋳物)と溶接するものが多い。古代ローマ時代頃から、世界中で発見されているもっとも原始的なハサミの構造である。

和鋏の構造

和鋏の構造

 ②X型 ラシャ切り鋏(洋鋏)

二枚の刃物をネジなどを中心軸として刃を交差させることで物を切断する。複合材を使用するものと鋼のみで鍛造するものがある。鋼だけで製造するものは、刃部も柄もすべてが鋼で出来ていて、非常にかたく頑丈ではあるが、無理に使ったり、落としたりすると刃が欠けたり、割れたりしやすい。また調子が悪くなると歪みを直すのが非常に困難となる。単一材であるため、複合材に比べ製造工程が減ることから、量産品のハサミには特に向いている。一般的に「付け鋼」よりも切れ味が少し劣る。訪問した工場(以下、当社)では「付け鋼」を使ったハサミも製造しているが、最近は減少傾向にある。

洋鋏の構造

洋鋏の構造

2 ハサミの材質

鋏など工具類は一般的に炭素工具鋼と呼ばれる材料を使用する。炭素工具鋼とは0.55~1.5%の炭素を含有し、焼入れ・焼き戻しを行うことで硬度を出すことができる材料のことである。

当社で使用している材質は主に日立YCS3と白紙2号複合材と呼ばれるものである。JIS規格番号JISG4401では、炭素工具鋼を用途や化学成分などでSK60~140で規定されているが、焼入性が悪いので、芯部まで硬さが入らない。また、水焼入れが必要なため、熱処理時の変形も大きい。少量のMn やCrなどを添加してこれを改善したのがYCS3である。

白紙2号複合材とは超高純度炭素鋼のことであり、白鋼(しろはがね)ともよばれる。島根県安来市の日立金属安来工場で生産される安来鋼(やすきはがね)の一種で、包丁やナタ、その他の多くの刃物に使われている一般的な鋼である。高純度炭素鋼というだけあり、炭素が多く含まれているため鋭い切れ味が特徴である。

3 ハサミの用途

ハサミは何を切るかによって使い分ける必要がある。私たちの日常の中でハサミを使うシーンを改めて考えてみると、紙、木・枝、鉄、紙、布、このほか、食用だと肉や野菜を切るものもある。様々な用途に合わせて形状や材質を変更しながらハサミは進化してきている。

4 利器工匠具とは

利器工匠具とは、一般に刃物のことを指す。明治時代の廃刀令によって多くの刀鍛冶が農業用や家庭用の刃物製造に商売替えしたことから、日本の刃物産業が始まったとされている。国内の産地はほぼ特定されており、岐阜・大阪・兵庫・新潟の各府県で国内シェアの9割以上を占めている。
日本標準産業分類(平成19年11月改定)分類項目名によると、
大分類 E 製造業
中分類 24 金属製品製造業
2433 利器工匠具・手道具製造業(やすり,のこぎり,食卓用刃物を除く)という分類である。

燕三条の地域産業の概要

燕市、三条市の特徴は金属加工業関連の集積が特徴である。高速道路燕三条ICには洋食器の製造工場の看板が大きく並んでいる。地元の人にも、「三条市と言えば?」と聞くとたいてい「金物の街」とかえってくる。
燕市は洋食器、三条市は利器匠工具の製造が多い。

燕・三条の歴史

寛永2年(西暦1625年)出雲崎代官の大谷清兵衛が五十嵐川の氾濫に苦しむ農民を救済するため、江戸から釘鍛冶職人を招き、農家の副業として和釘の製造法を指導・奨励したのが始まりとされている(三条市HP)。

新潟県の産業規模

2018年工業統計調査結果「従業者4人以上の事業所に関する統計表」によると、新潟県の製造品出荷額等は約5兆円であった。
三条市と燕市のそれぞれの市町村別製造品出荷額(単位:億円)は三条市が2,960億円に対し、燕市が4,400億円となっている。双方とも上位3産業の構成比の1位が金属という点では共通である。両市で新潟県の15%近く製造している。

新潟県は事業所数の産業別構成比において、全国的に見て金属関連の製造業の事業所が多い。

新潟県の金属製品製造業 事業所数

新潟県の金属製品製造業 事業所数

新潟県の産業全体の事業所規模でみると、従業員規模300人以上の企業が全体の2%に対し、4人~9人の小規模事業者が36%となり、出荷額等の比率はその真逆となり、日本の典型的な大企業・中小企業の構成となっています。

新潟県の事業所規模別 出荷額

新潟県の事業所規模別 出荷額

家族経営でやってきた法人も職人の高齢化に伴う廃業が増えているという。

出典:経済産業省「工業統計調査」(2018年実績)

行政の支援

新潟県の燕三条では地場産業である「金物の町」を製造業と観光業の両側面から支援している全国的にも珍しい地域である。新幹線の燕三条駅を降りると、駅構内に「燕三条駅観光物産センター WING」がある。燕三条付近の観光案内と地域で製造される金物の製品紹介、それだけにとどまらず、それを製造している工場、職人を紹介している。
行政は企業を支援し、企業は一般市民の工場見学受け入れなどを行い、協力して地域活性化に取り組んでいる。

新幹線の燕三条駅を降りると、駅構内に「燕三条駅観光物産センター WING」がある。

新幹線の燕三条駅を降りると、駅構内に「燕三条駅観光物産センター WING」がある。

 

市内の工場で作られた金属製品がガラスケースに陳列されている。

市内の工場で作られた金属製品がガラスケースに陳列されている。

この続きは別の機会で。

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