最近、超写実主義的な絵画が流行っているように感じますが、その中でも代表的な二名、石黒健一郎氏と斎藤雅諸氏の作品が「-奇跡の写実絵画- スーパーリアルワールド展」として、「浜松市美術館」で開催されています。
侮れない、実絵画に触れろ!
かつての絵画が現代の写真と同じように目の前にあるものをそのまま表現する記録的な意味合いを持つ時代がありました。個人的には、写実主義的な作品のほとんどはその回顧的なもので、カメラに取って代わられて、さらにそのカメラがフィルムからデジタルに移行し、一眼レフから一眼レフ的な電子データカメラ+加工アプリケーションによって、さらに一歩進んでみようという道筋の中にある表現手法のため、今現在、目の前にあるものを写真か絵か分からない!的なSNS受けするようなプロ、アマチュアの作品に、やや食わず嫌いを感じていたのですが、たまたま浜松出張で、午前中から行くところもなく、浜松城付近をふらふら歩いているタイミングで、そういえば近隣に美術館があったので、行ってみた、という感じで、久しぶりに美術館に足を向けたところ、あいにくの食わず嫌いの写実絵画であったため、ためらいながらも「暇」という天秤にかけた結果、やむなく1,200円という観覧費を払い、ビジネスバッグを100円ロッカーにぶち込んで、この「スーパーリアルワールド展」の会場に入ったのでした。
平日の午前中ということもあり、会場はそれほど混んでいません。むしろ、スーツ野郎がウロウロしているのが異様だと思います。
浜松市美術館の1階と2階で、石黒健一郎氏と斎藤雅緒氏の作品がそれぞれ展示されています。まずは1階からの鑑賞です。
石黒健一郎氏の作品は「油彩による超写実主義の世界。」として紹介されています。初期の学生時代の作品から展示されていましたが、前半は「まあ、写真のような風景画が上手いな、自分にはとても描けないな、すごいな」という作品が展示されています。
写実主義に対する正直な感想は、やはりそこにあるように思います。「まるで写真のようだ!」と、近づいてみたり、距離を取ってみたりしながら、「よく描き込んだな」と感心するのが適当な反応でしょうか。
写実的な絵をきっと描くことはないのでしょうが、目を近づけて、絵具の置き方をじっくり見て、「ふんふん、こう置けば、遠目でリアルに見えるのね」なんて見ながら解説文と合わせて読み進みていきましたところ「自身が風景作家であると見られていることに・・・」という文章が出てくるようになりました。
写実主義の作品の多くは風景画作家の一種であると刷り込まれていたので、作家がこのように感じているという点に、違和感というか、「あれ、そうなの?でもそれを追求しているのではないの?」という感想が出てきました。
風景の草一本一本、瓦屋根一枚一枚を写真と同じように描くことが、写実主義の人の求めているものだと思っていたのですが、どうも違うようです。
展示コースの途中から、徐々に作風に変化が出てきました。
会場に詳細な説明はありませんでしたが、端的に、石黒健一郎氏はその原点を「サブカル」に見出したのでした。その先にあるものが、キューティー・ハニーやけっこう仮面、マジンガーZといった永井豪氏のアニメを2.5次元で表現するというものです。
その先には、ライフワークになりつつあるという「ガスマスク」を付けた裸婦。すぐそばにいそうなくらいリアルな女性がガスマスクを着け佇んでいる様子は、現実的ではないのだけど、逆に現実的に感じ、脳に突き刺さる感覚を受けます。
そしてそのモデルというか、女性の顔が超絶美人という訳ではないところに、萌えました。
さらに足を進めると、アニメ2.5次元を具体的に表現までしてしまい、もはや等身大の立体作品になってしまったのです。それまでのち密に現実をキャンバスに描くという思考が3Dに展開されることにより、現存しないリアルを詳細に表現することになったのです。ロケットパンチの後ろ側には、実際のジェットエンジンのような機構が表現されています。(ちなみに、日本的ロボット戦闘アニメをリスペクトしている「パシフィックリム」で繰り出されたロケットパンチは、腕は飛んでいかず、サスペンション的な機構によって瞬間的なジェット推進力を持つロケット腕を動かしカイジュウにぶつけ、再び腕に戻すという現実的な機構で感心した次第です。)
そんなロケットパンチを操作するコクピットがこれ。
一部の作品は撮影OKということで、前出のマジンガーZとポスターの女性画を撮りました。マジンガーZの世代ではないのですが、下の女性キャラもよく分からないです。しかし、顔の細部にラメを使っており、女性の化粧感がリアルに表現されています。
そしてこの女性も絶妙に、「あえて超絶美女ではない」というところに、日常的なリアルを感じてしまい萌えるのです。
エアーブラシによる超写実の世界。斎藤雅緒
会場の2階に上がると斎藤雅緒氏の作品が展示されています。斎藤雅緒氏、誰?となるのが普通だと思います。正直、展示の流れが間違っているように思います。最初から結論を出すべきだと思います。
斎藤雅緒氏は皆さんが日常的に手にしている「お~い、お茶」や「1日分の野菜」などのパッケージイラストを描いている超絶巨匠です。そんな巨匠を「エアーブラシによる超写実の世界。」という汎用的な表現で客寄せしてはいけません。偉大なプロダクト・パッケージデザイナーであります。
斎藤雅緒氏の作品については撮影可能なものはありませんでしたが、前出のイトーエンの麦茶などにも見られるように、いつでも我々の目の前に自然にいてくれていた作品ばかりでした。
という訳で、本日は午後からの仕事前に何となく訪れた浜松市美術館ですっかりキュンキュンしてしまい、アートや美術や芸術が日常に食い込んでくることがとても豊かになるのだということを感じながら、いやいや午後の仕事に行った訳です。
ミュージアムショップで斎藤雅緒氏のハンバーガーを買いました。8,000円です。プライスレスです。買わないと後悔すると強く感じました。
これを持って、仕事場に行かなければ行けなかったので、気まずかったです。
さっそく、お部屋の壁に飾りました。
人生初の絵にお金を払いました。
開催概要
見どころ
今、日本のアート界で写実絵画への関心が再燃しています。キャンバスに広がる現実のように精巧な世界。それは、作家が創り出した個性豊かなリアルワールドです。本展では、画壇と産業界それぞれの分野で活躍する浜松出身の作家、石黒賢一郎と斎藤雅緒の写実表現約180点を紹介します。多彩な魅力にあふれた驚異の作品が繰りなす「スーパーリアルワールド」を、ぜひお楽しみください。
会期
令和元年9月28日(土曜日)~12月15日(日曜日)
開催時間
午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで受付)
ただし、9月28日(土曜日)は開会式のため、午前10時開館。
休館日
月曜日、10月15日(火曜日)、11月5日(火曜日)(但し10月14日(月曜日)、11月4日(月曜日)は開館)
駐車場のご案内
- 浜松城公園駐車場(無料)
- 市役所駐車場(会期中に限り2時間まで無料。駐車券を美術館受付にお持ちください。)
コメントを残す