長津田駅から東急電鉄「こどもの国線」で一駅、横浜市青葉区に、「こどもの国」があります。こどもの国は、都心から約30キロに位置し、多摩丘陵の雑木林をそのまま生かした自然の遊び場ですが、ここでイサム・ノグチの作品を鑑賞したり、遊んだりすることができます。
こどもの国とは
30万坪という広い敷地内には、芝生広場や大きな滑り台、プールや池、そして牧場!まであり、子供だけではなく、大人も楽しめる自然公園です。バーベキューも楽しめるエリアもあり、春~秋にかけては、多くの人でにぎわっています。
1959年(昭和34年)4月の皇太子殿下(現天皇陛下)のご結婚を記念して、全国から寄せられたお祝い金を基金に、1965年(昭和40年)5月5日のこどもの日に開園しました。旧日本陸軍田奈弾薬庫補給廠跡の国有地が米軍から返還されたのを受けて、国費をはじめ多くの民間企業や団体・個人の協力で整備されました。次世代を担うこどもの健全育成のための施設で、児童福祉法に基づく児童厚生施設です。
特に牧場は、「雪印こどもの国牧場」とあるように、雪印メグミルク株式会社が運営する観光牧場です。牧場には乳牛や羊、ポニーがおり、一番有名なものは「牧場のソフトクリーム」でしょう。
牧場ではエサやり体験もできる。
こどもの国のイサム・ノグチ
そんな、子供と大人のためのこどもの国ですが、著名な彫刻家イサム・ノグチの作品が設置されています。
イサム・ノグチはアメリカのロサンジェルス生まれの彫刻家ですが、画家やインテリアデザイナー、造園家、工業デザイナーという肩書も持ちます。イサム・ノグチの彫刻は横浜市美術館内にも多く展示されています。
彫刻は興味がなくても、家具は好き!という方もいらっしゃるかと思います。イサム・ノグチの有名な家具といえば、Vitra社の「Coffee Table(1944)」や提灯から着想を得た照明「AKARI」などは代表的な作品です。
In creating his design for the Coffee Table, Isamu Noguchi translated the biomorphic aesthetic of his sculptural works into a piece of furniture with distinctive organic forms. Presumably for this reason, Noguchi regarded the table as his best furniture design. Two wooden leg elements, which are available in black ash, maple or walnut, are positioned at a right angle to provide a stable support for the heavy, sturdy glass top.
自然光に近い照明は憧れに近いものがあり、和紙を透かしてくる明かりには、ほどよく光を分散させ部屋全体に柔らかい光を流してくれる。「AKARI」は光そのものが彫刻であり、影のない彫刻をねらった作品である。
イサム・ノグチの目指した空間デザイン
イサム・ノグチは、1920年代に彫刻家としての活動を始めて以来、徐々に住環境、生活環境へと領域を広げていきました。特に公園設計に関しては、北海道のモエレ沼公園は台地の彫刻と言われるように、人と地球の関係性を含めた壮大な作品でもあります。
こどもの国が開園した3ヵ月後の1965年8月、イサム・ノグチは米国から招かれ来日、こどもの国設計集団に参加しました。著名な建築家、大谷幸夫氏とともに児童館エリア施設の設計を担い、4ヵ月間、連日こどもの国を訪れ、精力的に構想を実現しました。
当時、イサム・ノグチは、彫刻と遊具、広場の造形を一体にした楽園のような遊び場「プレイグラウンド」を構想していました。その手始めが、こどもの国だったのです。
子供たちが大きな夢を持ち、自由に遊べるようにと苦心したようで、建築の際には、数センチ単位で指示も出したという記録が残っているそうです。
イサム・ノグチの設計から、すでに半世紀以上が経ち、建築物は残っていませんが、遊具は残っています。
エントランス通路
アーチ型エントランスはイサム・ノグチが設計した児童遊園への通路です。この通路をくぐって階段を上って児童遊園に入ると、児童館があったそうです。子供の目線ですと、ここから冒険が始まるような印象を与えるのではないでしょうか。
丸山
丸山と名付けられたコンクリート製の大型遊具があります。これもまた遊べる彫刻です。亀の甲羅のような山の直径は約7m、高さ2m。丸い貫通穴が開いており、中は滑り台のようになっています。
かつては、この丸山を囲むように児童館が建設されたそうです。休日ともなると、必ず子供たちが上り下りしている風景を見ることができます。
オクテトラ
イサム・ノグチの作った公園遊具で、最も有名なものがこのオクテトラではないでしょうか。オクテトラはコンクリート製のユニット型遊具で、単独で置いていても、二段に連結しても、中の穴を通って遊ぶことができます。子供たちが遊びの中で見せる行動、「くぐる」、「のぼる」を刺激する遊具は、50年経った現在でも健在です。
子供に遊ばれて完成する遊具やその空間が、今も昔も変わらず存在しています。子供がいる空間を設計したイサム・ノグチの思想がしっかりと残っていることを思うと、偉大なアーティストであるということを再認識させられました。
※平日に行ったので、人影がなく、貸し切り状態でした。
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