世界初の仮想通貨によるアート・オークション

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世界初となるブロックチェーン技術を用いた「部分所有」のアート・オークションが開催されるそうです。仮想通貨・暗号通貨を使ったアート・オークションとはどのようなものなのでしょうか?今後の主流となりうるのか気になります。

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世界初の仮想通貨オークションはアンディ・ウォホール!

世界初の仮想通貨を使ったアート・オークションの作品はアンディ・ウォホールの《14 Small Electric Chairs (1980)》という作品です。ブロックチェーン技術を使ったアート売買のプラットフォーム普及を目指すMaecenas(マエケナス)は、電子資産と現実資産の国際取引のコーディネートのために設立された特別目的事業体である英国のDadiani Syndicate(ダディアニ・シンジゲート)を通じ、仮想通貨によるアート所有に関するオークションを、2018年6月20日に行います。

ウォーホルの作品は6月20日にマエケナスのブロックチェーン・プラットフォームのリストに掲載されますが、49%を超える所有者がオークションでの絵画売買に関心があるとのことです。ウォーホルの《Reversal》シリーズは今では5.6百万ドル(約6億円)の価格となっています。購入者は、ビットコインやイーサリアム、またはマエケナスのようなブロックチェーン技術に基づいた仮想通貨を使って、アート作品のデジタル証明書付き部分所有権を購入することができる、というのが今回の試みとなります。

暗号通貨とは

最近はすっかり定着した感がありますが、暗号通貨とは、暗号理論を用いて取引の安全性の確保、およびその新たな発行の統制をする仮想通貨のことで、ビットコインが特に有名なのではないでしょうか。

仮想通貨は、時価総額が高い順に、ビットコイン(12.5兆円)、イーサリアム(5.6兆円)、リップル(2.4兆円)となっています。これに対し、マエケナスは順位344位(18億円)と、時価総額は上位グループとだいぶ差がありますが、アートに特化した仮想通貨のようです。(出所:https://coinmarketcap.com/ja/all/views/all/ 2018年6月15日現在)

※参考までに、2018年6月19日現在、マエケナスの順位は302位、時価総額23億円とこの4日間で28%も上昇していますよ!

 

マエケナスのアートヴィジョン

マエケナスは、アート好きに対し、有名な絵画所有権を購入することができる機会を与えてくれるオンライン市場を提供していますが、そのヴィジョンの中で、以下のように宣言しています。

モネへの投資は多くの人の超え、レンブラントを購入する特権はわずかな人だけに・・・、というのが今まででした。オークションハウスや銀行な法外な手数料を得て、効率的な現代市場からファインアートに対する投資を断絶しています。

マエケナスは、投資家が、ピカソの絵の一部分を所有する真に開かれたプラットフォームを作ることで、アート界を民主化することができます。

マエケナスは、資産の素早い取引、公正的かつ流動的に交換するための、世界のアートブロックチェーン市場を作っています。その手法は、何百万ドルもするアート作品を小さなデジタルファイナンス単位に分割し、わずかなコストで売買を容易にするものです。これは、今日の会社株式の売買手法に近く、投資家・コレクターそして作品のオーナーが絵画や彫刻の所有権を瞬時にやりとりできる技術です。また、新興のアーティストにすれば、このようなプラットフォームを利用することで、仲介者の干渉から解放されるというもので、ブロックチェーン技術をベースとした世界発のアート市場といえます。

 

アート作品をブロックチェーン技術で所有するとは?

マエケナスのウェブサイトには、その利用方法が記載されていますが、ギャラリー、ファミリー・オフィス(※)、投資家、コレクターそれぞれのメリットがあるようです。

ギャラリーにとって

例えば、チェルシー・ギャラリーは、ウォーホルのコレクションを拡大するために、300万ドルを調達したい考えています。

この場合、毎年13.5%の年利で3年間の美術担保貸付を受けるのではなく、ギャラリーの持つアートワークのいくつかをプラットフォームに上場することで、マエケナスの投資家から6%の手数料でその資金を調達することができます。

これは、ギャラリーにとって、40万ドルを超える費用を節約することを意味します。

ファミリー・オフィスにとって

例えば、あるクライアントが、レイシー・ファミリー・オフィスに対し、ファイン・アートに15百万ドルを投資することにより、彼女のポートフォリオをさらに多様化する義務を与えます。(つまり、レイシー・ファミリー・オフィスは、よりリターンの大きい投資先を探す必要がある。)

クリスティーズからアート作品を購入すると、約200万ドルの手数料(バイヤーズ・プレミアム)が発生します。

これと比較し、ファミリーオフィスは、マエケナスを介して、同様のパフォーマンスを持つアートベースの金融商品に投資することができますが、手数料は大幅に減り、顧客ポートフォリオの価値を150万ドル以上上げることができます。

※ファミリー・オフィスとは、欧米で発達した形態で、事業に成功した富裕資産家のファミリーが所有する事業や資産を積極的に経営・保全・運用し、現世代のリーダーシップ、 役割分担や資産分配、未来世代への継承やその育成を行うことで、ファミリーの永続的な発展を目的として運営される、一種のプライベート組織体制を指します。~ファミリー・ビジネス・ネットワーク・ジャパンより~

投資家にとって

例えば、ジョアンナは裕福層(100万ドル以上の投資可能資産を所有する世帯)ですが、彼女のポートフォリオを多様化するため、20万ドルをファイン・アートに投資したいと考えています。

彼女の資産はファイン・アート・ファンドには小さすぎますし、長期間の投資には興味がありません。

競売人はバイヤーのプレミアムで20%の手数料を徴収するため、投資がかなり高価になります。

これと比較し、マエケナスでは、わずか2%の手数料で異なる数多くのアート作品に投資することができます。

コレクターにとって

ジェームスは12万ドルの価値のある新しいジェフ・クーンズの彫刻を購入するため、資金を調達する必要がある現代アートのコレクターです。

彼のコレクションを売るか、高額なローンを組む代わりに、ジェームズの持つ作品の20%をマエケナスに上場して、必要な資金を調達することができます。

ジェームズは、コレクションをそのまま維持することができ、より低いレートで必要な資金を調達することができます。

仮想通貨でアートワークを購入する場合の留意点

仮想通貨でアートワークを売買する際の留意点とは何でしょうかね。一般的な仮想通貨と同様に、仮想通貨のレート増減にアートワークの価格も引きずられてしまうことがあるかもしれません。

一般的に、有名なアートワークは、転売されるごとに価格が増加していく傾向にあります(人気アーティスト作品なら)。このアートワークの価格の上に、仮想通貨のプレミアム価格が乗っかてくるので、投機目的が増えると値上がりを期待して作品の価値以上に価格が上昇し、ある日突然暴落する可能性があります。(とはいえ、その作品の本来価格まで下がるかは分からない)

また、所有権のみの「所有」であるため、「オレ、ゴーギャン(の作品の一部)を所有してるぜ!」と、カッコつけても、現物は手元になくネット世界のその向こう側にしかありません。

一方で、本当の駆け出しのアーティストにとっては、よいプラットフォームかもしれません。アートに興味のある投資家が集まるプラットフォームですので、自分の作品が、どの程度の市場価値があるのかを測ることができるでしょう(ただし、プライマリーはあまり高く望めないのでは・・・)。これに対する投資家は、将来的に成長性の高いアーティストがいれば、その作品の所有権を早い段階で確保することができます。長期的な視点となりますが、このアーティストの作品が世に認められるようになれば、例えば100万円の作品が、作品そのものの価値上昇と仮想通貨の価値上昇の乗算効果もあるかもしれません。

とはいえ、仮想通貨の信用はまだ高いとは言えない状況です。仮想通貨によるアート市場の活性化に期待したいところですが、ご利用は自己責任で!

 

ダディニ・ファインアートとは

ダディニ・ファインアートはダディニ・シンジゲートの傘下にあり、2014年に設立されたロンドンのファインアートギャラリーです。ダディニは18~20世紀のヨーロッパのポストモダンやコンテンポラリーアートを専門としています。
2017年には、アート作品を仮想通貨で売買できる世界初のアート・ギャラリーとなりました。

www.dadianisyndicate.co.uk

www.dadianifineart.com

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