森美術館 「カタストロフと美術のちから展」

オノ・ヨーコ《色を加えるペインティング(難民船)》ミクスト・メディア・インスタレーション サイズ可変

2018.10.6(土)~ 2019.1.20(日)、六本木ヒルズの森美術館で、「カタストロフと美術のちから展」が開催されています。「先行き不透明な混沌とした時代に、アートだからできること」という訳で、天災・人災などに対し、アートがどのように向き合えるのか、というのがテーマです。

カタストロフと美術のちから展

カタストロフと美術のちから展

カタストロフとは、大惨事という意味で、東日本大震災やアメリカ同時多発テロなどが世界中で発生しています。カタストロフという絶望の中から、新たに再生していくアートという視点から、負を正に転ずる力学としての「美術のちから」について注目し、その可能性を問いかけます。

カタストロフは私たちを絶望に追い込みますが、そこから再起しようとする力は想像力を刺激し、創造の契機となることもまた、事実なのではないでしょうか。東日本大震災以降、国内外の数多くのアーティストが復興・再生への願いを込めて理想や希望を描き、より良い社会のために新しいヴィジョンを提示しようと試みています。

展示は2つのセクション、「セクションⅠ:美術は惨事をどのように描くのか―記録、再現、想像」と「セクションⅡ:破壊からの創造―美術のちから」から構成されています。

セクションⅠでは、地震、津波などの天災や事故や戦争といった人災から、個人的な悲劇を表現した作品までを幅広く紹介しながら、「美術が惨事をどのように描いてきたのか」に焦点を当てます。

セクションⅡでは、破壊から創造を生みだす「美術のちから」として、アーティストの豊かなイマジネーションによって制作された、再生、復興、より良い社会が表現された作品は、私たちに理想の未来について考える想像力を与えます。

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ミサイルのバリエーション

オリバー・ラリック《ヴァージョン(ミサイルのヴァリエーション), 2010》

オリバー・ラリック《ヴァージョン(ミサイルのヴァリエーション), 2010》

オリバー・ラリック《ヴァージョン(ミサイルのヴァリエーション), 2010》は、地上から発射されるミサイルを描いた作品です。合成写真かと思って、近づいてよく見ると、「絵」でした。数十発のミサイルが彼方に向けて同時に発射されていますが、逆に打ち込まれていたり、ミサイルが方向感を見失ってうろうろしたりと多様なバリエーションが見られます。1点だけですとただのミサイルですが、10点で構成されているので、バリエーションを通して「打つ方と打ち込まれる方」の2視点に加え、ミサイルでグチャグチャになっている混沌世界を第三者として感じることが出来ます。そういえば、我々はミサイルを発射する側の映像はよく見ることができますが、打ち込まれ破壊される側の映像はあまり見ることはありません。

ミサイルのバリエーションは、いくつかの作品から構成されており、それぞれのミサイルのバージョンを通して、打つ側・打たれる側の視点に気づく。

ミサイルのバリエーションは、いくつかの作品から構成されており、それぞれのミサイルのバージョンを通して、打つ側・打たれる側の視点に気づく。

アートと映像

本展では、映像作品が多く上映されています。アイザック・ジュリアン《プレイタイム》2014年のように、高額で取引されるオークションハウスへのインタビュー映像をリポート形式で伝えるものがあったり、イスラエルでピカソの作品を展示するためのプロセスを映像に収めたもの、チェルノブイリの汚染された公園遊具をアメリカで再構築するプロジェクトなど、目の前にある作品ではなく、その過程にフォーカスしたドキュメンタリー映像作品が特徴的です。
ただ、1作品の上映時間が10分を超えるものもあり、立って観るのがやや疲れます・・・。

星を描いただけのアート・・・?

ジョルジュ・ルースの《アートプロジェクト in 宮城》2013年は、作品の写真だけを見ると、室内風景に星を描いただけでちょっとよく分かりません。フランス出身のジョルジュ・ルースは、廃虚となった建物や改修予定の場所で絵を描き写真に撮るという手法で独自の世界を切り開いてきたアーティストです。その作品の一部が再現されていました。正面撮りすると金の星なので、斜め撮りです。

ジョルジュ・ルース《アートプロジェクト in 宮城》2013年

ジョルジュ・ルース《アートプロジェクト in 宮城》2013年

さすがのオノ・ヨーコ

会場の最後にはオノ・ヨーコの作品が待っています。参加型のアートということもあり、展示室の壁や床、中央の船にだって自由に、何を書いても良いのです。これまで見てきたカタストロフィーの中から、平和や希望を見出して、ここで表現するのです。

海外からの観光客の方が多いのが本展の特徴でしょうか。

オノ・ヨーコ《色を加えるペインティング(難民船)》ミクスト・メディア・インスタレーション サイズ可変

オノ・ヨーコ《色を加えるペインティング(難民船)》ミクスト・メディア・インスタレーション サイズ可変

展示会情報

会期:2018年10月6日(土)~2019年1月20日(日)

会場:森美術館

開館時間:10:00~22:00(火~17:00)*入館は閉館時間の30分前まで

入館料:一般 1,800円、学生(高校・大学生)1,200円、子供(4歳~中学生)600円、シニア(65歳以上)1,500円

詳細:森美術館ウェブサイト  https://www.mori.art.museum/jp/

東日本大震災などの自然災害、戦争やテロ、難民問題や個人的な悲劇まで、絶えず私たちを襲うカタストロフ(大惨事)。その時、美術はどのようにこれらと対峙し、どのような役割を果たすことができるのでしょうか。本展は国際的に活躍する現代美術のアーティスト40組の試みを通して、負を正に転ずる「美術のちから」の可能性についてあらためて問い直します。

屋外展示作品として『ウィッシュ・ツリー』(こちらのみ10/8まで)や『WAR IS OVER(戦争は終わる)』の展示も同時開催中。

 

 

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