最近、一緒にお仕事をしている一級建築士の櫻田さんと一緒に飲みに行った時の話です。
「最近、アートについて勉強をしています。」という話をしたところ、実は櫻田さんもアートの造詣が深いということが分かりました。
そこで、建築士の視点で、建物的にどこの美術館がオススメでしょうか?と聞いてみました。
櫻田さんは特に美術関係の建築士ではありませんが、美術館の建築というのは、それなりの設計士による設計が多いそうで、このような建築を見に行くついでに、美術館の中身のアート作品を見ているうちに、それなりにアートのことを知るようになったそうです。
そこで、一級建築士、櫻田さんがオススメする美術館(の外観)を3つ挙げてもらったところ、意外な答えが返ってきました。
第1位 グッゲンハイム美術館
グッゲンハイム美術館は、正式名称「ソロモン・R・グッゲンハイム美術館」で、アメリカ合衆国ニューヨーク市マンハッタン区にある、近現代美術専門の美術館です。
グッゲンハイム(February 2, 1861 – November 3, 1949)さんはアメリカの実業家で、鉱山経営で財を成したフィランソロピスト(篤志家(とくしか)」でもあります。
1980年代からアート作品の収集を始め、第一次世界大戦後にビジネス界から引退し、アーティストのHilla von Rebay氏の勧めにより、現代アートの収集に注力し、1937年に現代アートの振興のために「グッゲンハイム財団」を設立、1939年に最初の美術館を開設しました。
主な収蔵品としては、カンディンスキーのコンポジション8やフェルナン・レジェのコントラスフォーム、ロベール・ドローネーのSimultaneous Windows (2nd Motif, 1st Part) などの抽象絵画があります。
ちなみに、グッゲンハイム美術館のコレクションは、Karl Nierendorfさんによるセレクトによって、特にドイツの表現主義の作品が多いそうです。
グッゲンハイムさんは1948年に、かの有名な建築家フランク・ロイド・ライトさんに新たな美術館の設計を依頼します。
美術館の完成はグッゲンハイムさんの死後(1949年)の10年後の1949年にオープンしました。
その後、グッゲンハイムさんの娘さんであるペギー・グッゲンハイムさんがアートコレクターとして活躍しました。
1948年の設計で、すでに70年を経過していますが、美術館の外観は近未来的な造形で、近代建築に通じる有機的な曲線が印象的です。
当時はコンピュータを使ったCAD設計がない時代であって、この設計とは、相当革新的なものであったと思われます。
グッゲンハイム美術館は、明確な階層がなく、らせん状に上下する階層構造でアート作品を鑑賞することができます。
第2位 豊田市美術館
豊田市美術館は、1995年に開館した愛知県豊田市にある公立美術館です。
収蔵品の中心は20世紀美術です。
アーツ・アンド・クラフツ運動、ウィーン分離派、バウハウス、シュルレアリスムに属する作家の美術作品、同時期の家具などデザイン作品などが収蔵されており、近代デザイン史~日本の民藝に通じるところがあります。
岸田劉生さんの「麗子洋装之図(青果持テル)」や会田誠さんの有名な作品「あぜ道」もこちらに収蔵されています。
設計は建築家谷吉生さんによるもので、池を前面に配し、モス・グリーンのスレートと乳白の磨りガラスで構成されたモダンな外観や、水平、垂直の直線と矩形を基調とするミニマルな建築空間に特徴があります。
櫻田さんによると、訪問したちょうどその時に、市長さんが茶室「童子苑」を案内してくれたようです。
第3位 金沢21世紀美術館
金沢21世紀美術館
金沢21世紀美術館は、今年14年目を迎える石川県金沢市に開設されている美術館です。
金沢美術館は、地方美術館としては成功している方かと思いますが、その要因としては、「兼六園」という日本三大庭園の隣地に位置し、コンパクトな観光が可能であるという点であるかと思います。
コレクションの方針は、①1900年以降に制作された、歴史的参照点となるような作品、②1980年代以降に制作された新しい価値観を提案するような作品、③金沢にゆかりのある作家による新たな創造性に富む作品となっています。(「金沢21世紀美術館収蔵作品図録」より)
主なコレクションとして、美術館の顔ともいえるレアンドロ・エルリッヒさんの「スイミング・プール」がありますが、美術館が特別にオー出した作品だそうです。
設計者は「妹島和世+西沢立衛/SANAA」で、以下の特徴があります。
- 現代美術の展示に適した白い壁面の空間(ホワイトキューブ)であり、個々の展示室はそれぞれ独立した立方体として円形の館内に配置されている。
- 鑑賞者はどれでも好きな展示室からランダムに見ていくことが可能。
- 展示室を集落のようにおのおの独立させて配置し、天井と円形のガラスの外壁で覆っている。
- 外壁同様各所にガラスが多用されているため、館内の見通しが非常に利く。
- 美術館周りの芝生でゴロゴロでき、美術館と人の距離がとても近い
このほか、青森県立美術館もオススメしていました。
特に冬には、奈良美智さんの「あおもり犬」の頭に雪が積もり、あたかも帽子に見える様子が良いとのことです。
正直、国立西洋美術館や国立近代美術館ではない点が、さすが建築士と感じました。
引き続き、建築士の視点から見たアートについて聞きだしたいと思います。
コメントを残す