アドミュージアム東京で「ひと・人・ヒトを幸せにする広告 - GOOD Ideas for GOOD ll - 展」

2016年5月、さまざまな社会課題の解決にチャレンジする世界の広告コミュニケーションを紹介した特別企画展「世界を幸せにする広告 −GOOD Ideas for GOOD−」の開催に続き、第2弾となる今回は、Humanity(人間性)をテーマに秀作を取り上げた「ひと・人・ヒトを幸せにする広告 - GOOD Ideas for GOOD ll - 展」が開催されています。

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アドミュージアムとは

アドミュージアムとは、カレッタ汐留にある日本で唯一の広告ミュージアムです。特に広告にフォーカスしているミュージアムということもあり、江戸時代から現代までの広告作品300万点が収蔵されています。「江戸時代に広告!?」と思うかもしれませんが、歌舞伎や芝居、相撲などが民衆の娯楽の一つとして大いに発展した時代では、これを「商機!」ととらえて、これまでにない手法で「商品」が次々と広告宣伝されたそうです。

アドミュージアム 展示風景

アドミュージアム 展示風景。アドミュージアムでは、各種展示品の撮影が許されているので、本気で広告を勉強したい人には、大変有益なライブラリーにもなる。

役者や力士を描いた浮世絵版画には、地域の名産や薬などのキャッチーなロゴが表示され、いわゆる「企業」が芝居主催者とコレボレーションして、劇中にその「薬の効能」をアピールするセリフなども大いに取り込まれたそうです。現代の広告宣伝手法と同じ方法が、江戸時代ではすでに実施されていたという点で驚きです。

今日、広告はマーケティング手法の中に含まれる重要な戦略の一つですが、世界に先駆けて「マーケティング」を行った人物とされるのが、「越後屋(三越)」の創業者「三井高利(みついたかとし)」であると、ピーター・ドラッカーは指摘しています。

駿河町越後屋 店頭美人図
駿河町越後屋 店頭美人図 (するがちょうえちごや てんとうびじんず)

三井高利が実施した販売手法として、「店前(たなさき)売り」、「現金掛け値なし」、「正札(しょうふだ)販売」、「仕立(したて)売り」などが有名ですが、これらを「マーケティング」という視点で束ね学術的に考察したドラッカーもすばらしいのですが、しっかりと「広告」と位置付けてミュージアムに取り込むのも面白い視点です。展示の中には、江戸時代の文献等に記された挿絵などからの出展もあり、よくその視点で資料を調べ上げたものだと感心します。

「店前(たなさき)売り」と「現銀(金)掛値なし」である。当時、一流の呉服店では、前もって得意先の注文を聞き、後から品物を持参する見世物商いと、直接商品を得意先に持参して売る屋敷売りが一般的であり、支払いは、盆・暮の二節季払い、または12月のみの極月払いの掛売りが慣習であった。そのため、貸倒れや掛売りの金利がかさむので、商品の値が高く、資金の回転も悪かった。高利はこの制度を廃止し、店前売りに切り替え、商品の値を下げ、正札をつけて定価制による店頭販売での現金取引を奨励した。現金売りによる収入は資金の回転を早め、二節季払いの仕入れ先には数倍活用された。(三井広報委員会HPより)

ところで、アドミュージアムにはキュレータの方(?)が何人かいるようで、展示品の説明を読んでいると声をかけてくれます。広告の時代背景などの補足説明を話してくれるのですが、そこで聞いたプチネタが面白いです。「お寿司弁当の定番といえば、いなりずしとのり巻きが入った『助六(すけろく)』ですが、『助六所縁江戸桜』という歌舞伎の演題の主人公『助六』の愛人である『揚巻』さんに由来しているですよ。諸説あり!」だそうです。市川團十郎演じる男前で腕が立つ粋な江戸っ子・助六にあやかったという話もあるようですね。

三越ブランドを盛り上げたアールヌーボーの商業美術

「ひと・人・ヒトを幸せにする広告 - GOOD Ideas for GOOD ll - 展」では、特別展と常設展の区切りが分からないのですが、日本商業美術の先駆者ともいわれる杉浦非水(すぎうらひすい 1876年~1965年)氏の紹介もあります。こちらも三越つながりですが、三越の嘱託社員としてPR誌の表紙やポスターを作成しており、アールヌーボーのようなヨーロッパ図案を取り入れた曲線的で装飾性の高いデザインは当時からも人気が高かったようです。同年代のアール・ヌーヴォーを代表するグラフィックデザイナーといえば、アルフォンス・ミュシャ(1860年~1939年)氏も有名ですが、こちらとは雰囲気がことなる杉浦非水氏の作風は、どこかで見た方も多いのではないでしょうか。

アドミュージアム 杉浦非水のポスター

アドミュージアム 杉浦非水のポスター

日本初のヌードポスターはあのワイン

同様に、「これも見たことある!」といえば、コピーライターの片岡 敏郎(かたおか としろう、1882年~1945年)の「赤玉ポートワイン」が有名なのではないでしょうか。このポスター、時々、居酒屋で見ることができますが、日本初のヌードポスターであったそうです。こちらでは、クリエイティブディレクターの先駆者として紹介されていることもあり、現代では佐藤可士和氏といった感じだったのでしょうかね。

アドミュージアム 片岡敏郎「赤玉ポートワイン」

アドミュージアム 片岡敏郎「赤玉ポートワイン」

戦争時代のプロパガンダ広告とは

広告の発展は、第二次世界大戦中でも大いに活用され、多くのプロパガンダが作られてきました。この時代の広告もいくつか展示されていますが、力強い筆書きの文字だけ!や愛国心を高揚させるような資料を見ることができます。

その中で、ちょっとかわいい視点のプロパガンダがありました。「何がなんでもカボチャを作れ(昭和19年 東京)」という真っ赤なキャッチコピーで、「蒔き時は四月中旬 下旬」と時期まで教えてくれるので、「ちょっと作ってみようかな」と考えてしまいます。ところが、「種子も作り方も隣組長さんにお尋ね下さい」といきなり丸投げしています。時代背景的に容易に収穫できるカボチャを国家ぐるみで作ろうということだったんでしょうね。「必勝食糧 絶対確保」というキャッチコピーもインパクトがあって、なぜこうなった感があります。

何がなんでもカボチャを作れ!

何がなんでもカボチャを作れ!

とげとげの雲の中で懐かしのCM!

アドミュージアムには印刷広告だけではなく、これまでに作られてきたCMのアーカイブもあります。写真にあるように、雲のようなものの中に、モニターが設置され、AC(公共広告機構)のCMなど、ずいぶんと懐かしい映像を見ることができます。

アドミュージアムにはCMも多数見ることができる

アドミュージアムにはCMも多数見ることができる

また、すぐ近くでは、CMの絵コンテと一緒に、実際に制作されたCMを見ることができ、「キンチョーリキッド」や「たんすにゴン」のCMを見ることもできます。改めて、日清カップヌードルの「ハングリー!?」などを見ると、当時としてはずいぶん衝撃を受けたことを思い出しました。

江戸時代から始まった日本広告史ですが、イラストや写真、映像といったメディアから口コミなどコミュニティーの場へとその姿かたちがどんどん変わっています。まだ誰も気づいていないような広告宣伝の手法はまだまだ開発されるのでしょうかね。

施設概要

建物名称 アドミュージアム東京
開館日 2002年(平成14年)12月1日
所在地 東京都港区東新橋1-8-2カレッタ汐留
運営団体 公益財団法人 吉田秀雄記念事業財団
延床面積 1078.3㎡

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