横浜美術館で「ヌード展」

横浜美術館「ヌード展」

2018年3月24日~6月24日まで、横浜美術館で「ヌード NUDE —英国テート・コレクションより」が開催されています。
西洋近現代美術における裸体表現の変遷に焦点を当てた展示会であり、世界屈指の西洋近現代美術コレクションを誇る英国のテートの所蔵作品を中心に展示されており、チラシ等の表紙を飾るオーギュスト・ロダンの彫刻、《接吻》を間近で鑑賞することができます。

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「ヌード展」の概要

「ヌード」は西洋芸術の永遠のテーマでありながら、それを切り口とした大規模な展覧会は前例が多くありませんでした。本展は、この難しいテーマを紐解き、ヴィクトリア朝から現代までの約200年におよぶヌードの歴史を辿ります。

ヌードは理想的な美の象徴として、愛の表現として、そして苦しみや儚さなど人間の内面を映し出す象徴として重要なテーマとされ、ときに批判や論争の対象にもなりました。

展示される作品は、ハーバート・ドレイパー《イカロス哀悼》1898 年のようなギリシア神話を題材にした、いわゆる西洋絵画のヌードや、ピエール・ボナール《浴室》1925年のような、「日本かぶれのナビ」と呼ばれ浮世絵の影響をたっぷり受けた絵画などのほか、彫刻、版画、写真143点です。

本展はもともとテートによる国際巡回展として企画され、シドニー、オークランド、ソウルを巡回し、ようやく日本国内で開催される運びとなりました。横浜美術館での開催にあたり、テート・コレクションに加え、国内の関連作品も展示されており、これまで以上に充実した展示会となっているようです。

目玉は写真撮り放題のロダン《接吻》

横浜美術館のヌード展では、ロダンの大理石像《接吻》(1901–4 年)が日本初公開されています。ロダンの代表作であり、男女の愛を永遠にとどめた《接吻》は、高さ180 センチ余り、重さ3トンを超すスケールで制作されています。この大理石像を目の前で、じっくり鑑賞することができ、さらにこの作品のみ写真撮影が許されています。

横浜美術館で開催されている「ヌード展」では、ロダンの大理石彫刻《接吻》を間近で鑑賞することができる。

横浜美術館で開催されている「ヌード展」では、ロダンの大理石彫刻《接吻》を間近で鑑賞することができる。

ロダン存命中に作られたこの作品の大理石像は世界にわずか3 体しかないそうですが、このような大理石の作品を3体も作れるということに驚きです。ロダンといえば、上野公園の国立西洋美術館の前に設置された《考える人》が有名です。この作品はもともとはダンテの「神曲」をモチーフにしたもので、《地獄の門》の上に座っている一人の「大きいバージョン」です。考えるというより、地獄の門の上から下を眺めている人、といった印象です。

今回、日本初公開となった《接吻》は、これと同様に《地獄の門》シリーズとして制作されたのですが、そのテーマ性にそぐわないと感じたらしく、単独の作品として発表されました。発表の際は、全裸の男女が抱擁する彫刻ということで、当時としてはあまりにも過激な描写であるため、作品は覆われた状態で展示されたそうです。それくらい見事な描写力ということでしょうか。

ターナーの描くヌード

おもしろいのは、イギリスを代表する風景画の巨匠であるジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775~1851)の作品です。ターナーは、光輝く幻想的な空や街並みを柔らかく描いた筆感が特徴ですが、実はその陰で、かなり際どい春画(え、見えちゃってる!感じ)のような裸体画のドローイングを残しています。男女が親密に絡み合うそのドローイングはターナーの死後、評判を気にする関係者により多くが焼き捨てられたと言います。確かに、現代社会ではヌードは比較的寛容に受け止められるようになってきていますが、18世紀当時はそうではなかったのでしょうね。

展示されている作品名からも、それを感じることができます。

  • 《ベッドに横たわるスイス人の裸の少女とその相手「スイス人物」スケッチブックより 1802年》
  • 《カーテンのひかれたベッド、性行為中の裸の男女「色彩研究(1)」スケッチブックより 1834–36年頃》
  • 《カーテンのひかれたベッド、横たわる裸の女性を見る女性を含むふたりの人物「色彩研究(1)」スケッチブックより 1834–36年頃》

テートとは

1897年に開館された、英国を代表する国立美術館のひとつです。16世紀から現代に至る英国美術を展示するテート・ブリテン、国内外の近現代美術を展示するテート・モダン、テート・リヴァプール、テート・セント・アイヴスの4つの施設から成り、約7万点のコレクションを有しています。現在、4つの施設での年間来場者数の合計は約660万人を記録しています(2015–16の年間来場者数 テート・リポートより)。
その充実したコレクションのみならず、幅広いテーマを扱う展覧会やイベントによって、常に注目を集めています。

TATE BRITAIN

The home of British art from 1500 to the present day
FREE ENTRY 10.00–18.00

TATE MODERN

International modern and contemporary art
FREE ENTRY 10.00–18.00

British and international modern and contemporary art

FREE ENTRY 10.00–17.50

TATE ST IVES

Visit the iconic Tate St Ives gallery, overlooking the Atlantic Ocean
10.00–17.20

1889年、砂糖精製機で財産を築いたヘンリー・テートが、自身が蒐集した19世紀の英国美術品をナショナル・ギャラリーに寄贈を申し出たことがテート・ギャラリーの始まりです。テートはラファエル前派の作品を中心に65点のコレクションを有していましたが、その申し入れはギャラリーに十分なスペースがないということで、管財人から断られてしまったそうです。

そこで、テート自身も8万ポンド(数十億円!?)を寄付する形で、英国美術専門ギャラリーを作るためのキャンペーンが開始されました。こうして、現在ではテート・ブリテンとして知られるミルバンクが1897年に開設されました。

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