2018年のフランケンシュタイン バイオアートとは?

渋谷のショッピングビルにあるアート・ギャラリー「EYE OF GYRE」では、2018年9月7日~10月14日まで「2018年のフランケンシュタイン バイオアートにみる芸術と科学と社会のいま」が開催されています。人間の皮膚を使ったカバンなどが展示されているようで、様子を見に行きました。

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バイオアートとは?

バイオアートとは、世界的な隆盛を見せ始めている、生命を主題や素材にした芸術のこと(だそう)です。アーティストたちは、合成生物学や3Dプリンターなどを使い、バイオテクノロジーの飛躍的な発達が投げかける様々な問題やその近未来像と対峙することで、その頭角を現し始めている、とは、本展覧会の監修を行った飯田氏。ゲストキュレーターは、金沢21世紀美術館学芸員の高橋氏。

2018年のフランケンシュタイン展

2018年のフランケンシュタイン展

展示されている作品は、アレキサンダー・マックイーンの皮膚を幹細胞技術で再生し、レザージャケットに仕立てるイギリスのティナ・ゴヤンク、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの左耳をDNA合成によって再現するドイツのディムット・ストレーブなど、一般社会に生きる我々からすると、「え大丈夫、この人たち」という感じですが、極めてまじめに、科学的アプローチから作品を制作しているようです。

全体の構成は、「死者の蘇生」、「人新世における生命」、「生政治」という3部で構成され、今日の諸問題を芸術的視点から読み解くことを試みるための展示会です。

折しも、2018年はイギリスの小説家メアリー・シェリーが「フランケンシュタイン」を発表して200年となる節目の年だそうです。物語の中の科学者ヴィクター・フランケンシュタインが、死者の断片をつなぎ合わせて生み出した怪物を通して、世に提起した「生物を作り出すことの代償」といった問題は、人工知能や幹細胞などにまつわる技術が飛躍的に発達する今日において、ますます現代的なものになっていると、高橋氏は指摘しています。

ヒトの細胞でカバンを作るとか・・・

さて、その作品ですが、ロンドンのデザイナー、ティナ・ゴヤンクはファッション界の鬼才アレキサンダー・マックイーンの皮膚を幹細胞技術で再生し、「ファッションの素材にする」プロジェクトを発表しています。マックイーンは生前、自身の髪の毛を編み込んだドレスを制作しており、そのドレスの現所有者は、この幹細胞技術のために、マックイーンの髪の毛を提供することに同意しているそうです。

作品は、マックイーンの身体的特徴であるほくろ等も再現されており、現物を目の前にしながら、「幹細胞技術はほくろまで再現するのだなぁ」と現代の先端技術に関心してしまいます。革のジャケットは、思いのほか薄く、表面のざらついた素材感であり、パッと見はスウェードのようです。「ふむぅー、これはヒト細胞由来であるが、人としての生命活動ではなく、細胞の活動の結果をなめして縫製したのだから、倫理的にはセーフかしら、それとも・・・」などと考えてしまいました。なるほど、しっかり我々に「倫理とは」について考えさせる作品です。

入口においてある展示会の説明文に、「まるで人間の皮膚のようなレザージャケットは、マックイーンの体形やホクロ、そばかすや刺青まで豚革で精巧に再現した試作品・・・」

・・・「て試作品じゃねえかっ!!」と、帰って説明文を読むまで本物と信じてしまっていました。「よくもだましたなーっ!!」

ファッション界の鬼才、アレキサンダー・マックイーンの皮膚を幹細胞手術で再生し、ファッションの素材として使う

ファッション界の鬼才、アレキサンダー・マックイーンの皮膚を幹細胞手術で再生し、ファッションの素材として使う

DNA情報印刷機

パッと見ただけでは、ちょっとこれは評価が難しいな、という作品もあります。《BLP-2000B:DNAブラックリストプリンター》という作品です。これは、遺伝子情報をひたすら印刷している作品です。そう、パッと見では「印刷しているだけ」の作品です。

ところが、これも帰って説明文を読むと、「パンデミックを起こす危険性を持ったウイルスの塩基配列など、バイオ企業が合成を禁止しているDNA配列のみを作成して印刷する」作品だそうです。ゲノム編集技術の登場によって、生命を容易かつ安価に編集できることは、生命科学の発展に貢献できる可能性を開くと同時に、新たなバイオテロの引き金にもなりうるというジレンマを提示しているのです。

そういえば、つい先日、がん免疫薬の開発者がノーベル賞を受賞しましたが、あの薬も遺伝子が関係しますよね。ゲノム(遺伝子)解析からゲノム変異情報を特定することが、抗がん剤開発の主流となっているそうで、最近はホールゲノム(人のゲノム解析)が3時間で完了し、遺伝子から見た疾患の推測まで出るようです。あと2年もすれば、手術・放射線治療・抗がん剤に加えて、免疫療法が確立されるかもしれません。

DNAを印刷中。

DNAを印刷中。

パッと見は、レシートをひたすら印刷しているようにも見えるけど、違う。

パッと見は、レシートをひたすら印刷しているようにも見えるけど、違う。

ヤドカリのアート

ちょっとほっこりする作品もあります。

ヤドカリの宿を3Dプリンタで作成したものです。《やどかりに「やど」をわたしてみる》。

3Dプリンタで作られたさまざまな都市の模型に住まわせる作品で、ニューヨークから東京へ、東京からパリへ引っ越しを続けるヤドカリに、移民問題やグローバル化した世界におけるアイデンティティの問題を読み取ることもできる、という積極的な講評です。また、人工物を受け入れ背負うヤドカリは、リテラルに人新世(人間が他の生命体を圧倒し、それゆえに自らも絶滅のリスクに晒す時代)を表す優れた隠喩であるともされ、「う~む」と考え込んでしまいます。

このヤドカリさんは、以前「Asian Art Award 2018 supported by Warehouse TERRADA – ファイナリスト展 」にも展示されていました。あれから9か月、少し大きくなったのでしょうかねぇ。

ヤドカリの宿を3Dプリンティング。

ヤドカリの宿を3Dプリンティング。

ヤドカリ。

ヤドカリ。

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