モディリアーニを描いた映画『モンパルナスの灯』は1958年にフランスで制作され、すでに60年が経過しています。
先日、ひょんなことから、モディリアーニの映画があると聞いて、amazonでポチった訳です。
モンパルナスの灯とは
モンパルナスの灯の主人公は、現在では名の知れたアーティストである、アメデオ・クレメンテ・モディリアーニ(Amedeo Clemente Modigliani、1884年7月12日 – 1920年1月24日)です。モディリアーニは悲劇の画家と呼ばれることもあり、その一部を垣間見ることができる映画です。
洗濯船におけるモディリアーニ
ポール・ギヨームの肖像(1915年、オランジュリー美術館蔵)
時代背景は、第一次大戦後のパリ・モンパルナスで、麻薬とアルコールにおぼれ、病を患う若き画家モディリアーニが、その才能が世の中に認められず、荒んだ生活を送っている中で出会った美しい画学生ジャンヌとの出会いから始まります。ジャンヌの献身的な愛や友人の援助を受けながらも、画壇の成功には程遠い日々を送りながら、病魔に蝕まれていくモディリアーニと、その死を虎視眈々と狙うハゲタカのような画商が対比的に描かれています。60年前のフランス映画ということもあり、正確な歴史物やらミステリー物ではなく、なんとなくふんわりとストーリーが進んでいきます。
モディリアーニはアルコール依存と貧困に苦しんだ芸術家ですが、この役を演じたのがジェラール・フィリップです。ストーリーの中では、酒におぼれ、女性に手を挙げるなど、とんでもないダメ男ですが、繊細なはかなさがにじみ出ています。ジェラール・フィリップス(1922-1959)は、フランス・カンヌ生まれの二枚目スターです。1953年に開催された「フランス映画祭」では初来日しており、日本でも人気を博したようです。残念ながら、1959年には肝臓がんのため36歳という若さで死去しました。
フランス映画ですので、基本的には「愛」が描かれています。モディリアーニを中心に、複数の女性が登場します。モディリアーニに献身的に寄り添ったジャンヌは、アヌーク・エーメが演じ、愛人にはリリー・パルマー、カフェの女性、端役の娼婦や少女など多彩な女性。詳細は描かれていませんが、そうとうモテモテのようです。
1919年当時のモディリアーニは世間から見向きもされず、自身の才能について自信を失っている状態でした。酒場の勘定も満足に払うことができず、酒場の客相手に似顔絵(しかも縦長)を描いて、わずかなお金を得るという生活をしていたようです。
それでもチャンスはあったようで、本作では、ホテルリッツ(アメリカ)の経営者がフランスに来た際に、友人の画商がモディリアーニの絵を売りに行きました。経営者から酒に溺れていることを指摘されたモディリアーニが、「ゴッホは、この夏に見た黄色を表現するために飲むんだ」と答えたところ、経営者はすっかりすべての絵を購入する気になりました。ところが、「この絵を化粧品のビンやパッケージなどあちこちに印刷しよう!トイレにも貼ろう!」と意気込んだことがモディリアーニの気に障り、絵を売らなかった、というエピソードが描かれています。
モディリアーニの死後、画商モレルがアトリエにある遺品である絵を安値で買い漁ろうとする姿が描かれています。本作では、モレルはモディリアーニの生前、将来的に絵の価値が上がることを見抜きながらも、「死後に価値が上がる」として、一切買いませんでした。
こう聞くと、たいそうな悪者に見えるのですが、現実的には「見る目がある」と言わざるを得ないのでしょうかね。
芸術家を描いた最近の映画は?
昨年2017年には、「ひまわり」「夜のカフェテラス」などで知られる印象派の巨匠フィンセント・ファン・ゴッホの死の謎を、全編油絵風のアニメーションで描き、解き明かしていく異色のサスペンスドラマである『ゴッホ 最期の手紙』が公開されました。俳優が演じた実写映像をもとに約6万5000枚におよぶ油絵をアニメーション化するという手法で作られており、その制作時には世界中から画家を募集していました。
しっかりとゴッホの軌跡をたどった映画で、サスペンス感たっぷりなところが現代的です。モンパルナスの灯は、特に登場人物の紹介もありませんので、誰がだれなのかが分かりにくいのですが、逆に言えば、モディリアーニとは誰かということを知らなくても、いわゆるフランスの愛の映画だと思って観ても良いのかもしれません。
amazonでお安く買える「モンパルナスの灯」、ぜひどうぞ。
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